OPGのロゴ入りキャップを持つ若林プロ(左)と
会長の西田穣(右)

「キャリアの扉を開く」
という共通点が繋げた、
パーパスサポーターへの就任。

西田
OPGは会社や現場で働く人がいてくださって成立している会社です。 彼らは「自分はこういうふうになりたい」や、「ああいうふうにしてみたい」、「新しい仕事にチャレンジしたい」など試行錯誤しながら自分のやりたいことを見つけていきます。 また、時には悩んで路線変更したりするような人も多いのです。
どこの会社でもそうですが、女性のM字カーブという問題があって。 結婚とか出産がきっかけで仕事が変わるとか。 そんな人もいる中で、色々なチャレンジをしようとか、夢を追いかけようとする人を応援するようなことができればなと思っていたときに若林プロのお話を聞いて、素晴らしいご縁だなと思いました。

若林プロ
ありがとうございます。
プロゴルファーの世界は、良いときもあれば悪いときもある世界なので、怪我をしたら続けられないスポーツですし、セカンドキャリアなどそういうことも考える時期になってきているような気もします。 でも、できるだけ第一線で頑張りたいっていう気持ちはすごくありますし、出産しても第一線で頑張るというのは今まではあまりない事例ですので、女子プロゴルファーとして活躍する次の世代に「こういう選択肢もあるよ」っていうのを伝えていけたらいいなと思いながら、今、ゴルフをしています。

西田
「良いときもあれば悪いときもある」と言うのは、我々のようなスポーツとは違うジャンルの仕事でも一緒です。 同じような仕事をしていても成果が出る人と出ない人がいて。 でも、それを見て「自分と比べてどうのこうの」と批判していてもあまり意味がない。
「第一線で頑張りたい」という若林プロの気持ちと同様に、「もっといい仕事をしたい」、「もっと楽しい仕事をしたい」という想いを実現するためには、どのスキルが足りないのか、何を学べばいいのかを追求しなければなりません。 まさに、その点でスポーツも我々の仕事も一緒なんですよね。
若林さんも「自分より上手だな」と感じる選手がいたのではないかと思うんですよね。 でもその人たちと比べて、なぜ若林さんは第一線のプロとして活躍してこられたのかって、やっぱり「周りの人と比較してどうのこうの」じゃないところもありますよね。

若林プロ
そうですね。 周りと比較して強くなれる部分もありますけど、最終的には自分の問題ですからね。

西田
そうですよね、変えられるのは自分の努力ですよね。 OPGでは「いろんな扉を創ります※2」と言っていますが、結局はその扉の入り口に立つのも自分の努力だし、考え方ですよね。 研修とか教育とか、リスキリングみたいなチャンスをいっぱい創ってはいますが、こちらから「じゃあこの制度を活用して勉強してください」と言っても、ご本人がどう踏み出すかですよね。

若林プロ
自ら進んで取り組むのと、他の方から言われてやるのとは違いますよね。

西田
そう、全然違いますよね。 僕らも後押しはしますが、そこから先はご本人の意思に委ねています。
特にスポーツ選手の方は、その意志を強く持たないと、はっきり結果に出てしまうじゃないですか。 ゴルフだったら1打ずつ結果が出ちゃう。

若林プロ
そうですね。 気持ちの持ち方がとても大事です。

※2 いろんな扉を創ります: 扉とは「幸せな仕事」への機会や道しるべを意味しています。 OPGは、就業機会やトレーニング・研修、キャリア相談などを通じて、働く人ひとりひとりが扉を開く後押しをしています。

母として、
プロゴルファーとして、
葛藤の日々。

西田
プロとして第一線で活躍することと、結婚、出産することの両立への不安や迷いはありませんでしたか?

お子さんと一緒に

若林プロ
私は「将来、結婚もしたいし子どもも欲しいけど、ゴルフはずっと続けたい」と思っていたので。 女子プロの中には「まだゴルフ頑張りたいから、結婚や出産はまだ」と考える方もいらっしゃいますが、私は「結婚や出産をしたから何が変わるのかな?」って思います。 しっかり協力をしてもらわないといけないかもしれないけど、それを理解してくれる人と結婚したいって思っていたし、いつ子どもを授かってもいいなと。
私の場合は姉(マネージャー)が「近くでサポートするよ」と言ってくれたので、姉の気持ちにも応えたいし、主人をはじめとして家族みんなが私のことを応援してくれているので、これは頑張るしかないなと考えています(笑)。

西田
産休から復帰されて苦労もたくさんあったと思いますが、母親になる前と後では大きな変化がありましたか? お子さんが生まれて、練習する時間が短くなったりとか。

若林プロ
物理的に練習できる時間が少なくなってしまうので「どのように練習を集中してやるか」という点には悩みました。 トレーニングもできる範囲でやってはいましたけど、やっぱり出産前に比べれば筋力も落ちていますし、2022年は特にすごく怪我に悩まされた一年でした。
実は2022年の前半、家族との時間よりも、とにかく練習を最優先でがむしゃらに頑張ってしまったので、メンタルも体力も残ってないような状態で試合を続けていました。
でも、「それは違うかもしれない、もう少し子どもとの時間や家族との時間を大事にしながらやれるかもしれない」って思うようになって。 そのほうがプレーも良くなる気がしたんです。 その結果、練習の時間と家族との時間をバランスよく取るようにした2022年の後半は、成績も上がっていきました。

西田
確かに、僕らはよく「ワークライフバランス」なんていう言葉を使いますけど、そういう意味でいうと、ワークライフバランスが取れていたのかもしれないですね。

若林プロ
取れていたように感じます。 試合先でホテルに戻って夜になると「子どもはどうしてるかな」とか、「こんなにゴルフ漬けで寂しい思いさせてないかな」とか、すごく後悔するときもあって。 でも2022年に関しては、練習も短時間で切り上げた方が成績は良かったです。

ゴルフか出産か、
天秤にかけなくていいよ、
と伝えていきたい。

西田
今の若い女子プロも、結婚しても出産してもプロを続けたいという考えの選手たちがいると思いますが、そういう声を聞いたとき、ご自身の中で「もうちょっと頑張ろう」みたいな気持ちになることってあるんですか?

若林プロ
ありますね。 もともと私より若い女子プロらにそういうふうに言ってもらいたいがために頑張っていた部分もあったので。 さきほど「まだゴルフ頑張りたいから結婚しない」とか、「子どもはもうちょっと先でいい」と思っている人がいるという話をしましたが「ゴルフか出産か」という天秤にかけさせたくないというか、ここで立ち止まらないでほしいなって思う気持ちがあって。
「どっちを取る?」というようなのは嫌じゃないですか。 どっちも叶えていいと思うし、大変かもしれないけど「できないことではないよ」っていうのを伝えたいと思っていて。

西田
プロゴルファーという世界だけに限らず、人生の様々な場面でキャリアに悩むタイミングがあるかと思います。 でも、「仕事やキャリアか、あるいは出産や子育てのどちらかを選ばなければいけない」という固定観念ではなくて、「どちらも選んでいいんだよ」、というのを後押ししてくれている若林プロの姿は、スポーツ選手のみならず、すべての働く女性にとってもメッセージとしてすごく強いかなと思いました。

ママでもゴルフに打ち込める
環境を実現させるために。

若林プロ
私は今、恵まれた環境にいるので女子プロを続けられていますが、やっぱりそれぞれ家庭の環境が違っていたりとか「子どもの世話をするのでプロ活動はできない」という方も中にはいらっしゃるので、その解決のために何かできないかなと考えています。
今はツアー中のプロゴルファー向けに、ゴルフ場に託児施設を設置してくださったりするサービスもあるんですけど、実際に利用させていただいてすごく良かったですね。 子どもを見てくださる方も保育士の資格持った方で。
ただ、プロで託児施設を利用する選手はまだまだ少ないので、なかなか私たちから「また設置してください」とは言いにくいのが実情です。 私も毎週ゴルフ場に子どもを連れていくわけじゃないので。 だから、強く発信できない部分もあります。

西田
ゴルフ業界そのものが、「自分たちの業界をどうするか」っていう目線で見たほうが良いかもしれません。 今、ゴルフを楽しむ女性が増えている中で、「子どもができたからゴルフやめます」という方もいっぱいいると思います。 つまり、その女性たちをゴルフ業界から離脱させてしまっているわけじゃないですか。
若林プロご自身が、いまのような思いを抱きながらプレーされていることをメッセージとして発信していければ、どこかでそれに火が付いて、支援してくれる方とか、同じように思っている他競技のアスリートも「うちのスポーツ業界も同じような悩みを抱えているけど、サポートが遅れているんだ」と横のつながりができて、大きい流れになって「世の中を動かす」ってこともできるはずです。
若林さんのご活躍そのものが、様々な環境で活躍している女性のキャリアを後押しするきっかけになることが、我々の願いでもあります。

若林プロ
本当にそうですね。 私の活躍する姿を発信することによって、ゴルフ業界だけでなく、女性が自分のキャリアを諦める障壁となるものを少しでも減らしていくことができればなと思います。
また、オープンアップグループがパーパス経営を推進するにあたり、僭越ながら私の経験から、パーパスサポーターとして助言や支援をさせていただくつもりです。 どうぞよろしくお願いいたします。

Profileプロフィール

氏名 若林舞衣子(わかばやし・まいこ)
出身 新潟県
経歴 11歳から競技を始め、2005年から3年連続でJGAナショナルチームに選出。
05年「世界ジュニアゴルフ選手権」で優勝。
07年プロテスト合格。
08年「SANKYOレディース」でツアー初優勝。
16年に入籍を発表し、18年11月より産休制度を利用。
19年4月2日に第一子となる長男・龍之介くんを出産。
20年6月に産休から復帰。
21年「GMOインターネット・レディース サマンサタバサ」でツアー4勝目。
同大会最終日には「85ホール連続ノーボギー」のツアー新記録(当時)も樹立した。
2023年1月現在、34歳。